Cg/Cgkの効果

測定精度が悪いとコストが増える!?

話を分かりやすくするため、Cpだけに焦点を絞って説明します。

 

品質が高ければ、Cp値が大きくなり、品質が低い(バラついている)場合はCpが小さくなります。Cpの値が高いほど、より優秀な工程と言えるわけです。 しかしCpが低くなる要因は製品の品質だけの原因ではありません。

 

そのそもCpの計算は、測定機や検査装置のデータを使って行う訳ですが、根拠となるデータの質自体に問題がある場合、計算されたCpは本来の値より小さく(悪く)なります。

 

例えば、工作機械で公差±0.1mmの部品を加工し、±0.03mmのバラつきを持つ測定機で測ったとします。その時、公差とバラつきの関係は下図のようになります。


本来なら±0.1mmをターゲットとして加工すれば良いのですが、加工後の機上測定で公差ギリギリの部分については、測定値のバラつきにより公差内に入っているかどうかを確認できません。

 

例えば、機上計測の測定結果が下限公差ギリギリの9.9だった場合、測定機のバラつきにより、9.93~9.87の間の値であるという事しか分かりません。下限公差、上限公差共に公差ギリギリの部分に関しては正確な良否判断が出来ません。つまり表示上は公差内の結果を得られたとしても、実際には下図のピンクの斜線部分に値がある可能性があるという事になります。


この場合、測定機のバラつき分を考慮し、加工公差を両側とも0.03mm狭く(厳しく)する事で、理論的には測定機のバラつき分を加工精度でカバーする事ができます。例えば厳しくした上限公差ギリギリの10.07という値が出た場合、測定のバラつきを考慮しても、本来の公差である10.1を超える事は無いからです。


測定機のバラつきが正確に分かっていなければならないのでゲージR&Rを行い、変動範囲を把握します。

 

「10回くらい測定して、最大、最小の範囲でバラつきを求めれば十分なのでは?」という意見も聞かれます。しかし単純なバラつき幅を計算しただけでは、「偶々良かっただけ」という指摘を払しょくできません。

 

ゲージR&Rを行えば、外れ値が出る確率が一定以下である事を証明できます。下図は6σでバラつき範囲を計算しているので、測定値がこのバラつき範囲を外れる確率は3/1000以下です。一般的に25回測定すれば十分とされています。


本来なら、下図の赤線のような分布曲線を得られればCp=1.33※以上を達成可能ですが、測定機のバラつきの影響で、公差付近は外れているかどうか正確な判断できません。その為、確実にCp=1.33を達成するには加工結果が青の曲線のように分布するような精度で加工しなければなりません。Cpは分布の範囲と公差の比率で計算されるので、公差が狭くなった分だけ、加工のバラつき範囲も狭めなければ同じCpの値を維持できません。

 


幸運にも、上図のように公差を厳しくする事が可能な場合は解決できますが、加工精度に余裕がない場合、このような事はできません。その場合上限、下限ともに、公差ギリギリで仕上がった部品(下図のピンクの斜線エリア)に関しては公差外である可能性がある為、NG品の混入を避ける為、良品とする事ができません。反対に青の斜線部分に関しては良品がNGと判定され、無駄に良品が廃棄される可能性もあります。

 

測定能力を正確に把握していないとコスト増となるのはこの良品を良品と判定できる根拠がない(測定精度が悪い)事に起因します。


下図は、ゲージR&RがCp値に与える影響をグラフ化したものです。

Cp=1.5を達成する場合を比較すると、ゲージR&Rが公差の10%の時には実際の値で1.57を達成できるよう加工すれば観測値で1.5を達成できる為、ロスは少なく済みます。しかしゲージR&Rが30%の時は加工のバラつきをより小さくし、加工の実力値を1.88まで高めてようやく観測値として1.5が得られる事になります。

 

一般的にゲージR&Rの結果が公差に対し10%以下であれば最適であり、10%~30%の間では条件により適合としても良いとされています。30%を超えると、実際のCpと観測されたCp値の差が急激に開いてしまう事がグラフから分かります。特に高いCp値を求める場合、ゲージ能力が低いと実際の値と観測値との差が大きくなるため、Cp値を合格ラインへ持っていく為、必要以上に加工精度を上げる必要が出てきます。

ここでようやくCg、Cgkが登場します。

ゲージR&R(以下%GRRと記述)を使って説明しましたが、ゲージR&Rは下図のような式で計算されます。


昨今の自動計測装置の場合、EV(装置自体のバラつき)は当然存在しますが、AV(測定者によるバラつき)は殆どありません。誰が測定プログラムを実行しても結果が変わらない場合はEVが変動要素のほぼ100%※になる為、EVが分かれば測定能力を確認できることになります。

 ※固定具にバラつきが発生する場合は、固定具による違いも評価に含める必要があります。 

 

下の帳票を見ると分かりますが、Cgが1.33の時というのは、%EVが15%の場合に相当するという事が分かります。

 

Q-DASのsolara.MPではCgの表記だけでは分かりにくい為、現在の測定能力で測定が可能な最小公差もCgの右側に表示しています。下記例の測定システムでは、最小公差0.2mmまで測定可能という事が一目でわかります。 


ゲージ能力評価をするメリット

  • 十分な測定能力を確保しておくことで、加工公差を必要以上に厳しくする事を避けられます。
  • 良品をNGと判断してしまう事による材料ロスや、NG品が良品として流出してしまった場合の回収や手直しのコストを削減できます。
  • 測定能力を把握しておくことで、安定して生産できる加工精度レベルを知る事ができます。
  • 普段から測定能力を掴んでおけば、測定以外のバラつき(不安定要因)や変動傾向を発見しNG品を生産する前の前兆をとらえる事に役立ちます。

 

 

実際には加工箇所(特性)が幾つもあり、それら1つ、1つについてExcel等で測定能力を把握し、結果をCp/Cpkの計算へ反映させる事は非常に大きな労力を要します。Q-DASのsorala.MPはCg、Cgkの算出やゲージR&R評価手順が予め組み込まれており、MSA準拠の信頼性の高い評価結果を得る事ができます。