Cp/Cpkの実践的な活用

工程能力評価の実践

工程能力指数Cp、Cpkを実際に使った加工工程の工程能力評価実践編です。Cp、Cpkについての解説はこちらをご覧ください。 

工程能力評価のおさらいです。Cp、Cpkは下図の数式で求めます。

Cp

Cpk


分布曲線を使うのは、将来のデータの分散傾向を掴むためです。

Cpの解説でも言及しましたが、正しい分布曲線ならば、データの発生傾向が分布曲線に近似します。下図はその通りとなっていて、分布曲線がデータ分散の傾向を表しています。下図のデータは正規分布曲線と呼ばれ、「平均付近が最も高く、平均から離れるにしたがって、段々発生頻度が低くなる(カーブが緩やかになる)釣り鐘型のデータ分布(正規分布)」の傾向を表す事ができる曲線です。この曲線はガウシアンカーブと呼ばれ、統計の世界では最も基本的な分布曲線です。正規分布するデータなら、データ数が増えても正規分布曲線に沿ったデータの分布傾向は変わらないので、将来のデータ分布傾向を予測できるという訳です。

正規分布と正規分布曲線を押さえたところで、下記のヒストグラムを見てください。これは平面度を測定したデータをヒストグラムにしたものです。

正規分布曲線と、σの位置をヒストグラムに当てはめると、下図のようになります。


分布曲線にデータが近似していません。

何処がおかしいか、下図にポイントを纏めてみました。

  • +3σより外側のデータが4つも発生している。データ総数は200個なので、出現確率1/50。想定している3/1000よりはるかに多い。
  • 平面度は0(ゼロ)以下にはなりません(ゼロが自然限界)が、分布曲線に従ってデータが分布すると仮定すると、-2σと-3σ間(0以下)の階級にも相当数のデータがあるはずだ、という事になります。

ここでもう一度、±3σの意味を思い出してください。±3σを外れるデータが発生する確率は3/1000以下のはずですが、たった200個のデータ中で4個も発生しています。1/50の確率です。理論上の確率と全く合いません。

 

理由は簡単で、正規分布においては、確率的に±3σの間に99.73%のデータが存在しますが、上記例は正規分布になっていない(非正規分布)ので、実際のデータの分布が正規分布曲線に沿わないのです。 

 

このようにデータが正規分布していない場合、正規分布曲線を前提とした、一般的なCp、Cpkの計算式をそのまま適応しても将来的なデータ分布は予測できません。

つまり工程能力評価が正しくできず、現実の品質のバラつきが予想とかけ離れた結果になってしまうという事です。理想的な計算式を覚えるだけでは実践でなかなか通用しないのが現実です。

非正規分布

非正規分布でσが使えない場合でも、統計分析ソフトウェアのqs-STAT を使えば工程能力を計算する事ができます。

Cp、Cpkの計算の意味をもう一度確認します。Cpは公差と±3σの比率、Cpkは平均とUSL、又は平均とLSLとの比率を表しています。

σを使うのは、そこに大部分のデータ(±3σなら99.73%)が存在するという事が分かり便利だからです。

 

言い換えれば、知りたいのは「大部分のデータが分布する範囲」であって、σはそれを知る為のツールでしかありません。つまりσに頼らない方法で、99.73%のデータが分布する範囲を求める方法があれば良い訳です。qs-STATではパーセンタイルメソッド※を使って-3σ、+3σに当たる位置を割り出す事が出来ます。

※パーセンタイルメソッドについての解説は長くなる為、ここでは割愛します。

 

ここで、一般的に知られているCp、Cpkの式をパーセンタイルメソッドを使ったものに書き換えます。6σは全体の99.73%の範囲なので、上限と下限を0.135%ずつ除外した範囲が6σに相当する範囲となります。

この範囲に相当する位置はqs-STATが計算してくれます。qs-STATはXxx%というヒストグラム上の任意の位置(分位点と呼ぶ)を計算してくれます。Xxx%と表記されますが、特にσとその倍数の位置を示す分位点をXloXupと表示します。

loはマイナス側、upはプラス側を表し、続いて数字の2や3を付けて何σに相当する位置かを表します。例えば+2σ相当の分位点はXup2となります。

qs-STATで正しく表示されたヒストグラムは下図のようになります。

少し左側の表示が詰まり過ぎていますが、σに代わって、XloとXupが表示されています。これでσの倍数に代わる分位点が分かるので、これらから算出した分布(バラつき)の範囲と公差を比較すればこれまで通りにCp、Cpkを計算する事ができます。

このケースの場合、多数ある分布関数から、対数正規分布が最もフィットする分布としてソフトウェアが判断しました。

下図左が正しい分布曲線により計算されたCpk=1.27、右が誤った分布曲線(正規分布)で計算されたCpk=2.77です。元のデータは全く同じですが、結果は大きく異なります。


このパーセンタイルメソッドによる工程能力評価は実はISO22514 Statistical methods in process management(プロセスマネジメントにおける統計的方法)では標準的に使われている手法です。

 

パーセンタイルメソッドを使うからと言って、何か特別な計算をしなければいけない訳ではありません。基本的なCp、Cpkの計算のσの部分が置き換わるだけで、正規分布の場合と同じ方法でCp、Cpkを計算する事ができます。

 

Q-DASによるCp、Cpkの計算は非常に強力で、ISO規定に沿ったも分布モデルをAIが自動で最適な選択してくれます(自分で選択する事も可能)。選択した分布モデルによるCp、Cpkの値の比較も可能です。

現在、無償トライアル版をご用意していますので、興味のある方はこちらのリンクよりライセンスをご請求下さい。

 

このパーセンタイルメソッドは工程能力が不安定な工程立ち上げで特にパワーを発揮します。

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時間工程立ち上げ時間を短縮する