計測レポート自動化は生産性を向上するか?
Q-DASを使って、三次元測定機や形状測定機の計測レポートを手書きの転記から、自動化したいという依頼が増えています。
さて、計測レポートを自動化する事で切削工程は改善するでしょうか?
答えは「No」です。
レポートを眺めているだけでは現実は変わりません。レポート内にNG品があったり、工程能力が基準に満たない場合、工程を改善して初めて良品率が上がり、生産性が向上します。
品証や検査部門から上がってくるレポートを見て、加工条件を見直したり、機械のメンテナンスを行う等のアクションをしなければ、何も変わりません。
品証、検査部門では製品、特性(加工箇所)を軸にしたレポートを作成しますが、他方、加工担当者は、どの機械、どの工具で加工されたものに問題があるかという事に、大きな関心があります。
例えば下記のようなレポートは製品の特性(測定箇所)別に測定1回毎の結果が出ているので、製品視点では分かり易いですが、これを見ただけでは、どの機械、何番の工具で加工されたのかが分かりません。測定データの時間やロット番号、シリアル番号から当該の機械を特定し、NCの履歴を確認して加工した工具を探さなければなりません。
下記例では、加工数が多く、20ページもレポートが出ているので、目視で漏れなく探すのはかなり大変な作業です。
加工部門がもっと使いやすいダッシュボードが欲しいという要望で、実装されたのがOCB(オペレータコントロールボード)です。
機械ごとに検査結果が纏められています。NGの最も多い、マシニング1をクリックすると、次レベルの工具別の情報を表示する事ができ、どの工具でNGが出たかをPC画面上で、一目で見分ける事ができます。
これで問題の発生している機械とツールが見やすくなりましたが、これだけでは、「何となくマシニング1のTool3 が良くないな。」という事が分かるだけなので、まだ情報の粒度としては粗いままです。
そこで加工結果の数値図を表示させます。ツール毎に表示を分ける事ができるので、「確かにTool3のNGが多いな。」という傾向は見て取れますが、数が多く製品個体の特定には不向きです。
そこで、データベース(DB)から、見たいモノだけ、つまり「マシニング1のTool3番で加工した特性でNGのロット(シリアル)の特性だけ」を抜き出します。
DBには膨大な数の製品、特性のデータが保存されている為、通常はSQL構文を使って条件に合うデータだけを抜き出します。
しかしSQL構文は誰でも書ける訳ではないので、容易には抽出できません。
しかしQ-DASのデータ抽出機能はSQL構文を記述する事無く条件をクイックフィルタに入れるだけで、目的のデータだけをフィルタリングしてくれます。フィルタのロジックも自動で図示されるので、条件確認も容易です。
上記で設定した条件でデータを抜き出すと下図のようになります。マシニング1、Tool3番で加工した特性のNG部分だけを抽出する事ができました。
ここで先程のようにレポートを出力します。
機械番号、ツール番号、発生したロット番号をレポートに追加します。
先程20ページもあったレポートが僅か2ページになりました。NGとなった個々のロット番号、機械番号、ツール番号の情報がセットであるので、NG品を即座に特定できます。加工者目線で見た場合も、どの機械、どの工具のオフセットを修正する(あるいは工具交換する)が直ぐに分かるので、改善作業に取り掛かる時間が大幅に節約されます。
OCBから、問題の製品を特定するまでの流れを説明してきましたが、ここで説明したのは1つの特性(測定項目)についてのみです。実際の加工後には何十、何百といった特性(測定項目)を評価する必要があります。それら多数の特性を持った製品が数十、数百とある場合もあります。
製品の種類 × 特性値の数だけ検討する項目数がある訳ですから、たとえ操作が簡単であっても数百~数千の特性について毎回手作業で行っていては、時間がどれだけあっても足りません。
Q-DASのM-QISエンジンはこれら一連の作業を全て自動化できるところに特徴があります。
作成した抽出条件はクエリとして保存する事ができ、レポートにもクエリを自動反映させられます。
一度抽出条件を作ってしまえば、後はQ-DASのスケジュラーがこれらを決まった時間やタイミングで実行し、条件に該当する製品のPDFレポートを自動出力し、メール配信も行います。
測定箇所や製品により公差やCp/Cpkの合否判定基準が違っていても問題無く自動化する事ができます。
毎回ソフトを起動して確認せずとも、必要な情報だけを纏めて配信するように設定しておけば、問題を即座に特定して素早く改善に取り掛かる事ができます。