欲しい情報は部署、部門によって異なる。
一口に生産品質データと言っても、その見方や、活用方法は様々です。
品質責任を背負う品証部門と、生産設備に対する責任を負う製造部門では必要とするデータも、その見方も全く異なります。本来切っても切れないはずの両部門ですが、両部門が緊密な協力関係にある企業は残念ながら非常に少ないと言えます。その理由の大きな原因として「見たいもの(興味のある事柄)」が異なる事が挙げられます。
品証部門は当然のことながら製品の品質視点でデータを見ます。どの製品の品質が問題となっているか、その製品のどんな特性に問題があるのか等をデータから読み取ろうとします。
一方、製造部門は製品の検査結果よりも、プロセスパラメータ(生産設備の状態や条件を表定義づけるデータ:温度や、オフセット値等)に関する情報を必要としています。品質が重要であるという認識自体は品証部門と変わらないのですが、問題のあった製品や特性そのものではなく、当該の製品や特性を加工したのはどの設備だったのか?どの工程で発生したのか?その時のオフセット値や温度条件はどうだったか?という目線で問題を認識します。
工程改善をスピーディに行うには、加工後の検査データだけは不十分で、製造設備からのデジタルプロセスデータが不可欠です。検査データと、特定のプロセスデータは密接な相関がある場合が多く、検査データとプロセスデータを紐づけて管理する事で、品質改善施策の試行⇒検証が劇的に早くなります。
機械加工で例えるなら、CMMの測定で加工結果の良し悪しを判断しますが、その時の加工機側情報が紐づいていれば、どの機械で加工したか、ワークの温度は何度だっがか? その時のオフセット値は幾つだったのか?という情報をセットで把握できます。
これら情報を製造側へフィードバックする事で、検査結果の利用価値が何倍にも高まります。
例えば、保全部隊が特定の機械のスピンドルを修理したいと思った時、その機械で加工した製品にこれだけの問題があるというようなエビデンス(証拠)を数値データでパッと揃える事ができれば、スピンドル修理の経済合理性が証明され、稟議もスムーズに通るでしょう。
設備(加工機)のオフセット値や温度条件等の変位による製品(加工結果)に与える影響は、1回だけのピンポイントや前後10回程度のデータ量では相関関係や傾向を掴むことが難しい事があります。
機械自身にも熱変異補正機能があり、工具も徐々に素材が進化し、長寿命化しています。短時間の加工の場合、10回や20回の加工で、見た目で明らかに条件変化が分かるような工程では、安定した加工はできません。
それゆえ、長時間、長期間に亘ってデータを取らなければその加工プロセスの癖や傾向はなかなか掴めない事もあります。
長期間に亘ってデータを収集、管理する為には、自動でスマートデータを構築、管理するシステムと、そのデータベースを活用する優れた、柔軟性の高いソフトウェアの両方が必須です。
また、今後生産にも導入が進むと言われているAIも、加工条件の学習を行う為には十分に整理された構造化データが必ず必要になる為、現段階で整理されたデータを構築して置く事は将来的な投資としても重要です。
下記で機械加工とCMM測定の事例をサンプルデータを使って解説していますので、ご覧ください。