品質とビッグデータ

品質とビッグデータ


ビッグデータ、ビッグスマートデータ、スマートデータ、予測分析、Industry 4.0、スマートファクトリーなどのトピックが頻繁に議論されています。これらのトピックは品質管理、生産技術の分野にどのように影響するのでしょうか?

20年前のインターネットの普及が、今日私たちに大きな影響を与えるとは考えられなかったのと同様に、ビッグデータやインダストリー4.0の取り組みが及ぼす影響を完全に予測することはできません。

 

しかし我々は工程状態の全てを把握し、将来を予測しながら、考え得る可能な限りのシナリオを準備し、問題の発生確率を推定し、機会とリスクをコントロールするという努力を日夜続けています。これらは全てデータにより意思決定がなされています。データによる予測が合理的な選択をするベストな方法だと知っているからではないでしょうか。

 

Q-DASは一貫性のあるビッグスマートデータを構築する事で、工程からもたらされるビッグデータを最大限に活用する為のソリューションを提供します。

 

ビッグデータ
ドイツのBitkom協会は、記事でビッグデータを次のように定義しています。
「ビッグデータとは、質的に汎用性が高く、様々な方法で構造化された情報から得られた、意思決定に関連する知識を合理的に集積し適用する事を指す。これらの情報は急速に変化し、未知の量で提供される。」
この定義によると、ビッグデータとは企業が頻繁に変化する様々な非構造化ソースからのデータを整理し、測定、分析、計算、査定、評価しようとすることを意味します。

 

なぜビッグデータを使うのか?

最大の理由は、限られたスペースに多くの情報をコスト効率よく保存可能であるからです。多くの自動化されたセンサとデータ収集システム、そしてリアルタイム情報を転送する高い転送速度と処理能力もその理由の一つです。誰も正確な量を把握できない程、非常に大きなデータボリュームが日夜生成されています。例として、データの生成スピードを比較すると、2003年までのテクノロジーでは5エクサバイト(1エクサバイトは10億メガバイト)のデータを生成する為には1000年以上かかりました。しかし、2011年では約2日間、2013年では僅か10分でこれらのデータボリュームが生成されています。

この傾向は今後も続きます。図1は、それぞれのテクノロジーと組み合わせた経時的なデータトラフィックの例を示しています。 2020年には、このデータトラフィックは現在の数十倍以上になるとまで言われています。

 


品質管理の分野においてもこの傾向は顕著です。近年、工程の状態、情報を提供するセンサ、測定・検査機器が専門化、多様化し、一工程に係る複雑さや、データ量は上昇する一方です。品質管理に携わる我々が、工程制御、運用効率化を図る為、より質の高い意思決定をする手段として、これら工程情報からもたらされるビッグデータは必要不可欠なものとなってきています。

ビッグデータからの情報は、通常統計分析の結果を通じて得られます。集積されたデータを分析し、帳票とグラフを使って意思決定に使用しますが、 Q-DAS®では、このプロセスをknowledge Acquisition(知識獲得)と呼んでいます。

図1:データトラフィックの変化


ビッグデータをスマートに活用する

今日のビッグデータの問題点とは何でしょうか?データの集積はコインの片側にすぎません。コインの反対側は集積された情報の分析と評価です。 予測分析では、目的の結果を達成する為、統計手順、予測モデル、最適化アルゴリズム、データマイニング、テキストマイニング、画像マイニングを適用します。

 

ただし、これらの手法が現実にどれだけ機能するかは、データと現実がいかに一致しているかに依存します。今日、データの大部分は構造化されていないものと想定されています。専門家は、データの80%以上が構造化されていないと推定しています。さまざまなデータソースから収集、保存された大量の非構造化データは、通常そのままではデータの墓場となるだけです。これでは分析に繋がる、有効な基礎データとはなり得ません。それどころか、分析された結果は不完全で、あいまいです。得られた結果には根拠がなく、常に効果に対し疑念を残してしまいます。


様々なデータソースから膨大な量のデータを効率的に記録し、それらを構造化された方法で管理、評価するために、企業内インフラの構築が必要です。単なるビッグデータではなく、「(ビッグ)スマートデータ」を構築する必要があるのです。スマートデータを作成することで、分析に必要なデータの基礎を固める事が出来ます。

この要件を満たすには、データを記録した後、保存する前に「データ統合」を実施する必要があります。 

データ統合によるスマートデータの生成

 

現在、さまざまな種類のデータソースがあります。ただし、これらのソースを提供するシステムは通常、他のシステムとは通信せず、データの互換性もありません。多様なソースからのデータを構造化する為には、

 

  • 何のデータをどこへ保管するか
  • どのように保管するか
  • どの程度のデータ量を保管するか

 

を定義する必要があります。現時点で多様な機器、センサから提供される品質データフォーマットを統一する公的規格はありません。データフォーマットと保存方法を定義する事で、様々なステムからのデータ急増を抑制し、データの一貫性をもたらします。一貫性のあるデータは信頼できる評価の基礎となります。


  

Q-DAS®が考案した「Q-DAS®ASCII転送フォーマット」は、測定データの転送に関する業界標準に成りつつあります。 AQDEF(Advanced Quality Data Exchange Format)で品質データを一貫性のあるデータフォーマットへ統合します。このフォーマットを採用する事で、測定機器からのデータは、最適構造化された共通のフィールドへマッピングされた状態で提供されるようになります。

ただし、これらのフィールドが整理されていても、データ自体が正しく入力されている保証はありません。故に、データの完全性と有意性を評価(妥当性チェック)をしてからデータ統合をする機能が必要です。Q-DASは不完全なデータ、または欠落している情報を検出し、必要に応じて、不足している情報を追加した後にデータべースへ記録する機能を有しています。

 

以上の事から、品質データとしてビッグデータを扱う為には、下記3点がポイントとなります。

 

  1. 多様なソースからのデータを収集可能とする。
  2. 必要なデータを絞り込み、統一したフォーマットに並び替えた一貫性のあるスマートデータを作る。
  3. データの完全性、有意性チェックと補完を行う。

Q-DASでは工程分析、工程能力評価にビッグデータを活かす為、データ収集から分析、保管までを個々に独立した作業と考えず、一繋がりのプロセスと捉え、データの収集から分析、保管までを統合的にカバーするCAMERAコンセプトにより、ソフトウェアが設計されています。