Management(データの管理)

整理する、活用する、削除する。

1.製品毎のデータを一元管理
1つの部品を完成させる迄に検査や測定項目が1つしかないという事はまずありません。製品のほんの一部分の部品でも、通常は様々な検査工程を経て完成します。検査や測定には、寸法、形状、硬さ、振動、温度等の定量的に表されるものや、色、匂い、感触等の定性的(定量的に表す装置もあります)な項目もあります。工程ごとに違った測定機や検査装置を使ったり、目視検査するものもあります。Q-DASのシステムではこれらを総称して「特性値」と呼びます。1つの製品に関わる特性値のデータがCSVデータであったり、Excelであったり、または測定/検査装置独特のフォーマットとなっている場合もあります。このままでは特性値毎にデータを整理し、レポートも個別のものになってしまう為、1つの部品に対し複数のレポートが必要となります。またデータがバラバラでは特性値同士の比較をしたり、相関を調べたりする事も出来ません。そこでQ-DASではこれらを全て共通のAQDEFフォーマットのデータファイルへ変換します。
Q-DASのデータベースでは部品単位でデータを一塊として扱い、1つの部品に関わる全ての検査、測定項目は「特性値」としてツリー状に連なる形で管理されます。このように管理する事で、特定の部品に関するデータは全て1つのツリー内で管理する事ができ、その部品に関する特性値同士を比較したり、相関を調べたりする事が容易となります。


2.同じ部品か異なる部品か
品質データを扱う場合、「同一の部品」という定義は現実と異なる点があります。例えば同じ図面から作られた製品でも等級によって公差が違う場合があったり、全く同じ部品を2つのライン(または2台の機械)で製造する場合、2つのラインから送られて来る製品は管理上別物として扱う場合があります。このようなケースでは型式が同じでも管理上データ上を分けて扱う必要がある為、Collection(データ収集)段階から、検査や測定のデータと一緒に、これらを見分ける為の「追加データ」を付与しておく必要があります。Q-DASの構築するデータベースは通過する製造工程が違ったり、管理公差が異なる場合に、追加データを使ってデータ上、別物として扱えるようデータベースを構築する事が出来ます。また将来的にラインが廃止され、一つに統合されたり、或いは2つ以上のパターンに分かれた場合も、殆どの場合ソフトウェアの設定を変更するだけで対応可能です。

3.既存システムを生かす
Q-DASのデータ収集ソフトウェア、O-QIS、procellaを使って収集したデータは通常Q-DASデータベースで管理されます。しかしQ-DAS導入時に自社の品質管理用データベースを基礎にQ-DASのシステムを構築されたユーザは多数存在します。データ転送、登録を行うQ-DMは複数のアップロードクライアントを同時に制御する事ができます。AQDEFファイル群から取得したデータをQ-DASデータベースへ登録する一方、データコンバータを使い既存のデータベースに登録する為のファイルを生成する事が可能です。反対に既存のデータベースに収集された品質データの内、必要なデータだけを受け取り、Q-DASデータベースへ取り込みソフトウェアで解析しているユーザも存在します。これまでのシステムを全て破棄して、新たに構築するというのは投資面のロスが大きく、全く異なるシステムを導入する事に対する社内の抵抗もあり、現実的ではありません。既存の資産であるデータや収集の仕組みと親和性の高いシステムは導入ハードルを大幅に下げる事に繋がります。当社では極力これまでのデータやシステムを活かし、品質データを収集管理する方法を提案しています。

4.データの効果的な活用
データは蓄積するだけでは生産性向上に寄与しません。蓄積されたデータを活用する事で、初めて意味を成します。多様なセンサ、測定機、検査機器から集められた情報を見やすく、使いやす形のデータ構造として保持しなければなりません。その為には単一のデータベースでは全ての要件を満たせない事もあります。例えば、加工ラインの管理者は、公差外が発生したら、一早くアラーム情報を得たいので、更新間隔の短いデータベースが欲しいと思うでしょう。一方、長期的なデータを使って工程最適化を検討する場合、データの更新間隔は長くとも、分析に使用する多種のデータを必要とするかも知れません。データを活用する担当者の要望には、データの更新頻度や、必要する特性値の数に対する大きな隔たり
が有ります。このようなケースでは更新間隔の短いアラーム情報のみを収集するデータベースと、効率的に大量のデータをバッチ処理するデータベースとに分けた方が効率よくデータを処理できる場合があります。

5.破棄する事も重要
データ収集方法を考えている時には、破棄する時の事までなかなか気が回りません。収集頻度やデータボリュームにも左右されますが、自動収集を行うと、中間ファイルやログファイルが大量に発生します。測定機、検査装置が出力したファイル、Q-DASが作成するAQDEFファイル、通信やデータ変換プロセスで発生するログデータ、自動生成されるPDFのレポート等がこれに当たります。これらは即座に消して良いファイルや、データ復旧の為一定期間保存が必要なもの、トレーサビリティの観点から長期保存が必要なものと、消去するタイミングも様々です。データ収集システムのメンテナンスやエラー解析を迅速に行う為には、ログやエラーファイル等の中間ファイルを作る必要がありますが、これらは一定のタイミングで、定期的に削除する必要があります。削除作業は自動化しておかないと、消し間違えや消し忘れの原因となります。特にシステム管理担当者が変わった時に作業をシステマチックに引き継げるかどうかは、大きな課題です。データベース本体も定期的にデータをアーカイブしてサイズをコンパクトにキープしておく事でパフォーマンスを維持できます。予め、何のデータをどれだけ保持するか決めておく事で、無駄の少ないシステムを構築する事が可能です。

 

 

データのマネージメントに関する検討事項は多々あり、ここで全てを網羅する事はできません。別の機会に改めてご紹介します。次回はEvaluation=データの評価についてのお話です。