Reporting(レポーティング)

収集、分析結果の活用は無駄のないレポートから

レポーティングはデータ収集、分析の最終結果を担当者や管理者へ提示する最も重要なフェーズです。

どんなに優れたシステムを構築し、大量のデータを収集しても、レポート内容が担当者、管理者に必要な情報、知りたい情報を効果的に伝えられなければ、システム自体の有効性は評価されません。

 

「加工や、測定管理者全員にタブレットを持たせ、収集したデータの中から、オペレータが自在にデータへアクセスし、必要なデータを抽出して閲覧させる。」

 

カッコ良いですが、コスト面でハードルが高かったり、そもそもタブレット操作自体に習熟する前に面倒で使わなくなってしまうという話を聞きます。海外とは異なり日本の製造現場はまだ紙による管理が非常に多いのが現状です。

 

紙ベースのデータ管理は運用労力が大きく、転記ミスや記入漏れも多くなります。反面、誰でも読むことができ、データを閲覧する為の端末を必要としないというメリットもあります。少々汚れても読めるし、モバイル端末のように落として壊す事もありません。

 

全てのデータを様々な切口で見たいデータの分析担当者と、自分の作業に関わる必要最低限の情報だけを求める現場作業者ではレポートに求める内容が全く異なります。とりわけ機械や測定機のオペレータへは「必要な情報だけを短時間でパッと把握したい。」という要望が多い為、「データを見る。」という行為そのものが「作業」の1つなってしまうと、デジタル化する事で逆に効率が下がり、活用されないというケースがあります。

 

Q-DASのシステムはこの日本の「紙文化」とも上手く融合を果たしています。データの収集や管理自体は高効率のデータベースや高機能なソフトウェアを使って行いますが、Q-DASの自由度の高いレポート機能は、レポートをPDFやプリンタ等へ様々な書式のレポートを出力したり、メールで配信する事もできます。現場からレポート書式や表示内容変更のリクエストが出ても、短時間で柔軟に対応できます。

 

下記は実際のユーザであったケースでレポートを作成した一例です。

(注:データは実データではなくサンプルを使用しています。)

 

最初は機上計測で収集したデータを全てレポートして欲しいという依頼でした。

そこで、下図のようなレポートを作成しました。 



特性値(測定項目)は1ワークで、12か所あり、そのうち3か所で公差外(左図の赤いスマイリーマーク参照)が発生しているという状況でした。

 

ユーザの要望は下記のい2つありました。

  • 1つずつの項目について個別にレポートを作成し、各測定値27回についても数値データグラフが欲しい。
  • 公差外については直ぐに分かるよう表示して欲しい。

そこで、まず下記のようなレポートをQ-DAS標準テンプレートから選択しました。

トップにヘッダを付け、特性値毎に各数値の評価を、グラフと数値で表記するレポートを出力する事になりました。

 

12個の特性値(12項目の測定)があり、測定回数も多いため、1特性値毎に2ページが必要となり、合計24ページ(左図右上ページ数参照)のレポートが出力される結果となりました。

 

現場作業者から「ページ数が多く、公差外となっている特性値(測定箇所)を見つけるのに時間かかる。何ページも見なければならず、煩わしい。」という不満が出ました。縮小印刷すればページ数自体は減らせますが、それでは非常に見辛いレポートとなってしまうため、検討の結果、公差外のなかった測定については個別のデータを載せないようにして、ページ数減らすよう仕様を変更しました。


 

レポートの設定を変更し、測定データの中で公差外になったものだけを抽出するように設定を変更しました。

この作業はレポートの出力設定を一か所変更するだけでだったので、5分程で変更することができました。ページ数は12ページと半減しました。

ページ数は半減したものの、左図のように公差外が発生していない特性値についても数値図のを出力する為、「公差外が無いものについては紙がもったいないので、数値図も出さないようにして欲しい。」という更なる変更要望がありました。

そこで、今度は公差外のある特性値のみをレポート印刷時にデータベースから抜き出すクエリ(フィルタ)を作成し、レポートでそのクエリからだけデータを読み込むよう設定を変更したところ、公差外の発生している3つの特性値についてのみレポートが作成されるようになりました。結果として、最初24ページあったレポートは、必要な情報だけが凝縮された3ページのレポートに収まり、一目で、いつ、どの特性値の、何個目の加工で公差外が出たか直ぐに把握できるようになりました。

 

データ抽出用のクエリ作成や、レポートにクエリを適応する作業も、難解なSQL構文を記述したり、プログラムを作成する必要が一切無いため、15分程度で変更が完了しました。

 

このユーザはレポートを活用し、

 

①どの機械で、何時公差外が発生したか。

②どの種類のワークで公差外が発生しているか。

③何個目のワークで発生したか。

④どこの測定箇所により多く公差外が発生しているか

 

という、複数の情報を一目で把握できるようになり、このレポートをシフトの変わり目に作業引継ぎの報告書として使用することで、前のシフトで発生した問題の申し送りを、短時間で定量的に行えるようになり、生産効率がアップしました。

データを単に集めるだけでは生産効率アップに寄与しません。

整理し、「見たい時に、見たい形で」情報を取り出す事で効率アップにつながります。

 

情報の引き出し方は工程運用方法で適する方法が違います。必ずしもPCやタブレット等のハイテク情報端末でデータを閲覧する事が高効率に繋がるとは限らないのです。

 

デジタルの力を使って素早くアナログ情報を作り、ユーザへ提供するのも製造のIT化に対する抵抗を減らす一つの解決策となるのです。