計測技術による生産性向上

データによる差別化

「多くの人がQ-DASを使うようになったらせっかく導入しても差別化できないのでは?」

とある、ユーザから上記のような指摘がありました。

  

我々にとって身近な工作機械に置き換えて考えた場合、差別化はどのようになされているでしょうか?同じ機械、同じNC、同じ工具を使用すれば誰でも同じ加工が出来るでしょうか?

そう上手くは行かないというのは言うまでもなく周知の事実です。

 

今では一般的に使われるようになった5軸加工機も発売当初は限られたユーザにしか使用されませんでした。それは5軸の優位性をフル活用できるプログラマやCAMが少なかったからです。

 

「機械は買えるけど、腕の良いオペレータがいない。」

 

という話を5軸加工機の出初めには何度も耳にしました。

 

同じハード、ソフトを揃えても、どのようなNCプログラム(データ)を使って加工するかによってその効率は大きく変わってきます。

 

計測データ分析ソフトはお金を生まない

計測機器/計測ソフトウェアには何となくお金を出しにくいという誰もが持っている共通の感覚ではないでしょうか。増して、それらのデータを管理・分析する為だけに多くの費用を掛けられないというのが一般的な認識です。

 

ユーザや、納品先からの指定があり、加工した製品の寸法測定や検査をする必要に迫られ、測定機やデータ管理ソフトを購入するというケースが殆どだと思います。

 

このような場合、計測も、データ管理も全て検査表、成績表を作る為だけに存在する事になり、導入したとしても生産性に寄与する事は無く、どれ程作業が便利になり、短時間で終わろうとも、「やりたくない、余分な作業」であり、「なるべく安価なもので済ませたい。」となる訳です。 

 

計測やデータ分析・管理に投資しずらいのは、精度良く計測ができて、素早く結果をまとめる事が出来たとしても、それが「過去の事象の追認」だからです。この点においては、データ分析ソフトにコストを掛けられないという漠然とした認識はある意味正しいとも言えます。計測ソフトウェアを使えば、素早く正確に寸法を知る事が出来ます。分析ソフトを使えば結果を纏めてデータの傾向を見たり、レポートを作成したりする労力が不要となり、生産結果の振り返りが容易になります。しかしどれも「過去の事象の追認」である事には変わりなく、それによって直接生産性が上がる事はありません。

 

 

機械加工自動化の功罪

データ分析で成果を出している分野もあります。

人の作業手順の分析や、動線効率、物流最適化の分野では、データ分析に大きな投資がなされています。

しかし、機械加工の分野ではデータ分析はあまり進んでいません。何故でしょうか?

 

一つは作業過程把握の困難さにあります。

 

人間は作業時間が長くなれば、疲れ、効率が悪ければ作業に対する不平、不満が出てきます。作業時間が長くなれば残業代も増えてしまいます。

 

一方、機械はいかに効率が悪く、環境が劣悪でも疲れる事も無く、文句も言いません。黙々と指令された作業を正確に繰り返します。指令が悪ければ、作業時間が長くなったり、不良品が増えるだけです。

 

機械加工は近年自動化が進んでおり、操作する個人の能力による差が徐々に解消されつつあり、結果の良し悪しを別にすれば、誰がやっても同じ時間内に、決められた加工を完了する事ができます。反面、人手による作業のように作業の過程を目視で判断したり、気軽に途中で止めて確認する事が難しく、結果(加工)も見た目では分からない為、ワークを測定機器で計測するまでは良否の判定も出来ません。

 

つまり機械加工は気軽にプロセスを止める事も出来ず、良否判定をする為にも計測技術が必要であり、見た目(コンピュータによる画像判断も含め)での状況把握が極めて困難です。近年画像解析によるAI分析が盛んですが、通常のカメラでは加工精度を正しく評価する為の解像度も足りませんし、高解像度のレンズを用いても視野が狭すぎたり、耐環境性に問題があったりと、一般的な加工結果の評価は非常に困難です。

 

もう一つの違いは、人による作業は、オフィス業務でも、工場作業でもデータ分析から改善方法を伝え、実行してもらう事が可能であり、言い換えれば、改善方法が分かれば「言葉で伝える。」事ができます。しかし加工機はNC化されており、工具交換やワークの設置も自動化されています。当然工程の改善をする為には、NCプログラムを変更したり、加工条件(送り速度、主軸回転数、工具交換のタイミング)も全て、「数値」で伝える必要があります。自動化されている工程を途中で止めて人が調整すると、著しく効率を下げてしまうので、どのような条件の時に、どのような調整を行うかという判断も自動化しておかなければなりません。つまり、人手による作業よりも、分析から改善までのハードルが高いという違いがあります。

 

機上計測 VS 三次元測定機

前項を纏めると、データを活用して機械加工の生産性を向上させる為には下記2つの課題があります。

 

①加工結果を判断する為には測定が不可欠

②NCへのフィードバックは判断も含めて自動化が必要

 

加工結果を知る為の計測はどうすれば良いでしょうか?

一般的なノギスやマイクロメータを使った測定の他、3種の基本測定機(三次元測定機、形状・粗さ測定機、真円度測定機)を使った測定が一般的です。

 

一方、プローブを使った機上計測も近年普及してきています。加工プログラム同様、初めに計測プログラムを作って自動化しておけば、機械を止めることなく、人為的ミスを拝した計測が出来ます。

 

ところで、どちらの計測手法の方が優れているでしょうか?

 

経済的にどちらか一方だけしか導入できないのであれば、測定機を使うのが一般的ですが、生産性向上には両方あった方が工程をより深く理解する事が出来ます。