生産技術とIoT

新たな通信規格「5G」が実用化されました。

飛躍的に通信速度が向上する事で、IoT化が加速し、遠隔操作や自動運転、AR/VR等のサービスが拡充期待されています。

 

生産設備の世界では、多くのMES:Manufacturing Execution System(製造実行システム)が市場に投入され、ヒト、モノ(製品)、設備の状態や流れを可視化し、管理する事が出来るようになってきています。

IoTは製造設備からMESへのデータ自動収集を実現し、効率的なデータ管理に貢献しています。

 

生産能力向上に寄与するIoT 

生産設備の一つである工作機械にもIoTのスポットが大きく当たっている分野がありますが、その一つが機械の状態監視です。温度、工具長の管理、ワーク機上計測、主軸回転数、クーラント流量など、今やほとんどの情報がデジタルデータとして収集できるようになっており、今の工作機械はセンサの塊と言っても過言ではありません。

 

これらの状態をIoTを使って適切に管理すれば、機械の計画外停止を減らし、生産性が向上します。

設備の状態を監視し、良好な状態に保つ事ができれば結果として生産性が上がる、つまり「生産能力」増大に寄与する訳です。

 

上記の様なIoT活用方法に対し、真っ先にスポットが当たった理由として、それぞれの特性に「あるべき姿(値)」があり、個別の特性に対して「しきい値」を設けて判断するというデータ活用方法は万人に分かりやすく、導入後の効果を非常にイメージし易い事が挙げられます。

 

 

より投資効果の高いデータ活用とは?

コインの表、生産能力が生産「量」の指標だとすれば、裏側には「品質」の高さを示す「工程能力」があります。

 

生産設備の1つの特性について、「しきい値」を設け、それを超過しているか、否か、というデータの使い方は非常に、分かり易い活用方法ですが、裏を返せば同様のシステムを導入すれば誰もが同じメリットを享受できる事になる為、単純にシステムを導入しただけでは競合他社と大きな差別化にはなりません。誤解しないで頂きたいのはシステム導入に意味が無いのではなく、「お金を払って導入しただけ」では他社と差別化できる程の大きな投資効果はなかなか得られないという事です。

 

例えば加工機を1台導入したとします。機械にはツール、治具、加工プログラムがセットされており、理屈上では誰が加工スタートのボタンを押しても同じ加工が出来る状態です。しかし入社したばかりの新人機械オペレータが、20年選手のベテランオペレータと全く同じ工程品質を維持できるでしょうか?

 

「新人教育に割く時間が無い。」という声が良く聞かれる事が証明しているように、オペレータによる歴然とした差がある事は言うまでもありません。

新人オペレータもベテランオペレータもオフセット量、温度、加工品の計測結果等、機械から与えられる同じデータを見ているはずなのに、なぜ差があるのでしょうか?

 

答えは、データに対する解釈の違いにあります。

 

 ベテランオペレータは、データを「経験」に照らし合わせて判断し、新人オペレータにはできない状況判断を無意識に行い、細かな調整をします。機械、工具、治具などの条件が同じであっても、出来栄え(品質)はまだ人に依存するところが大きいという事をしているという事が言えます。 


データの解釈で差別化

IoTに話を戻します。機械の個々の特性(主軸回転数、工具摩耗量、クーラント流量など)に対し、しきい値を設け、それらに対し超過しているか否かを監視するというデータの活用は、各種センサから自動でデータを取得できるようにしておけば、経験に関わらず誰でも運用出来ます。しかし1つのデータが寄与するのは1つの機械特性値の判断についてのみで、それ以上の意味を持ちません。この点においては新人オペレータも、ベテランオペレータもデータ解釈の差はありません。

 

ベテランオペレータは経験に基づき、複合的なデータ解釈をする点で、新人オペレータとは大きな差がありますが、殆どの場合無意識に経験値と照らし合わせて判断しているので、「何をどうすれば良い。」という指示を明確な数値基準で他者へ示す事が困難な事が多々あります。これが「勘、コツ」の伝承を困難にしている大きな理由です。

 

IoTによって自動集積されたデータは、データ自体が示す単一の数値1つ1つを個別に見ているだけでは、それ程価値はありませんが、経験によるデータ解釈というブラックボックスを解き明かすカギとして使う事で真価を発揮し、数倍、数十倍の投資効果を生み出す事が出来ます。

 

つまり、

 

「データを効果的に解釈する事で真のIoT投資効果が発揮される。」

 

という事になります。

 

日本で「IT投資は直接生産性に寄与しないから大型投資は難しい。」と言われていた時代から欧州、米国の大手自動車メーカ、部品メーカは品質データ活用の為に1プロジェクト数千万~数億円単位の投資を行って来ています。その一つの理由としてデータを活用した、アジャイルマニュファクチャリングへの対応が挙げられます。

※新製品や特注小ロット品を短期間で開発・生産する体制を作る手法

 

変化の早い、多様なニーズに対応する為には、これまでのように1製品1ラインの生産方式では迅速な工程組み換えや特殊品、小ロット品への対応が困難な為、開発、製造の手法自体をデータ活用で劇的に革新させようという取り組みです。

 

大手自動車メーカが実践するQ-DASを使ったアジャイルマニュファクチャリングとは

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